戦争を知りたくない大人たち

 

 

 

まるで春みたいでむくりと動き出した

ガラス片を身体に散りばめたような寒さは東京にはなかった、冬を越せた動物たち僕ら、緊急事態は解除とキャスターは笑った、なぜか死ぬことを急かすような訪れ方をする春、現実味のない風が窓から入って横たわる、サブスク、Bluetooth、音楽の黎明期、発売日より前のCD何よりも特別だった

 

まるで夏みたいでスッと思い出した

夏フェスとかバーベキューとかの無秩序なストーリー、ずっと自主的ステイホームだけどステイゴールド、この1Kの方がよっぽど物語はアナーキー、扇風機の埃が西日で何故か綺麗に見えてウケる、マジヤりたいだけでやることもなくて、暗くたって夏が嫌いって気取ったって何もなくたって結局夏はちょっと楽しい、まあとにかくオレは気づいたらなんとなく夏だった

 

まるで秋みたいで世間は冷たかった

アッパー作用が最近ないな、新曲良かった、なのにもう心が動かない、こんなの信じてたなんて死にたくなるよ、なるだけだけど、ステージドリンクは赤ワインだったあの頃、打ち上げで電話繋げてくれたあの頃、早く売れたいって言ってたあの頃、青春って呼ぶほど若くなかったけど若気の至りって呼べるほど大人にもなれていないまま、ただ確かに生まれて初めての宗教だった

 

まるで冬みたいで言葉が白くなった

ただいまおかえりもメリークリスマスさえもない部屋、石油ストーブの匂い、死にたいのに赤信号でちゃんと止まってる自分に笑えたから 死にたくなるのやめた 君の曲聴くのやめた、不幸って実際超気持ちいいEEE、君の音楽が無くなって ロックンロールは鳴り止んでけど冬が来るたびに、レザージャケットを羽織るたびに思い出す あの頃が全部この温度に紐付けられている 冬が寒くって本当によかった